VLAモデルとは?仕組み・代表モデル5選・VLMとの違いをわかりやすく解説【2026年版】

VLAモデル ロボットAI制御 AI・技術

(2026年3月時点の情報です)

この記事のポイント
  • VLA(Vision-Language-Action)モデルは「見て・言葉で理解して・動く」を1つのAIで実現する技術。従来のルールベース制御と違い、未知のタスクにも学習で対応できる
  • 代表モデルはRT-2(Google DeepMind)、π0(Physical Intelligence)、OpenVLA(Stanford)、GR00T N1(NVIDIA)、Helix(Figure AI)の5つ。2023年のRT-2登場からわずか2年で一気に実用段階へ
  • VLMが「見て・理解する」までなのに対し、VLAは「動く」までを含む。Jetson Thor(2,070 TFLOPS)が「脳」として業界のほぼ全社に採用されている

VLAモデルとは — ロボットの「頭脳」を担う新技術

VLA(Vision-Language-Action)モデルは、画像認識(Vision)・言語理解(Language)・動作生成(Action)の3つを1つのニューラルネットワークに統合したAIモデルです。人間が「テーブルの上の赤いコップを取って」と話しかけると、ロボットがカメラで周囲を見てコップを特定し、指示の意味を理解し、腕を伸ばして把持する — この一連の流れを1つのモデルで完結させます。

従来のロボット制御はプログラマーが「Aの状態ならBの動作」というルールを1つ1つ書き込む方式でした。これに対しVLAモデルは学習ベースで、大量の映像・言語・動作データから人間の作業パターンを習得するため、プログラムされていない未知のタスクにも柔軟に対応できます。フィジカルAIの中核技術であり、2025〜2026年のヒューマノイドロボット業界を一気に実用段階へ押し上げた立役者です。

なぜ2026年に注目されているのか

VLAモデルが一気に注目を集めた背景には、3つの技術的ブレークスルーがあります。

  1. 大規模言語モデル(LLM)の成熟: GPT-4クラスの言語理解力を、ロボットの行動計画にそのまま転用できるようになりました。
  2. 合成データ生成技術の進化: NVIDIA Isaac Simなどのシミュレーターで、実世界で数年かかる訓練データを数日で生成できるようになりました。NVIDIA GR00T N1は合成データ+実データの組み合わせで、実データのみ比40%の性能向上を達成しています(出典: https://arxiv.org/abs/2503.14734 )。
  3. エッジ推論ハードウェアの登場: NVIDIA Jetson Thor(2,070 FP4 TFLOPS / 130W)のような小型高性能チップが、VLAモデルをロボット本体で動かせるようにしました(出典: https://www.nvidia.com/en-us/autonomous-machines/embedded-systems/jetson-thor/ )。

この3つが揃ったのが2023〜2025年で、2026年現在は「どう汎用化するか」「どう商用化するか」のフェーズに移っています。

VLAモデルの仕組み【3ステップで理解】

VLAモデルの内部処理は、ざっくり3つのステップに分解できます。それぞれ何をしているのかを順に見ていきましょう。

Step 1 — 視覚情報の処理(Vision Encoder)

最初のステップは「見る」です。ロボットに搭載されたカメラ(Tesla Optimusなら8台、Figure 02なら6基のRGBカメラ、1X NEOならデュアル8.85MP 90Hzステレオ魚眼)から取り込んだ映像を、Vision Encoderと呼ばれるニューラルネットワークに入力します。

Vision Encoderの役割は、ピクセル単位の画像データを「何がどこにあるか」を表す高次元の数値ベクトル(特徴量)に変換することです。代表的にはViT(Vision Transformer)やSigLIPといったモデルが使われます。この段階で「テーブルの上に赤いコップ、その横にペン、奥に本」といった物体と位置関係の情報が抽出されます。

従来のロボットビジョンは「このピクセルの色がコップの色に一致したら…」のような手書きルールが主流でしたが、VLA時代のVision Encoderは数十億枚の画像で事前学習されているため、見たことがない物体でもカテゴリーを推定できます。

Step 2 — 言語指示の理解(Language Model)

2つ目のステップは「言葉で理解する」です。人間の音声やテキスト指示を、大規模言語モデル(LLM)が解釈します。

ここで重要なのは、LLMが単に日本語を英語に訳すような浅い処理ではなく、タスクを細かいサブタスクに分解する点です。たとえば「朝食を作って」という曖昧な指示に対して、LLMは「冷蔵庫を開ける→卵を取り出す→フライパンを出す→コンロをつける…」のように、ロボットが実行可能な単位にタスクを分割します。

Figure AIのHelixでは、このプロセスを「System 2」と呼び、7〜9Hzの低速でシーン理解と計画を行います(出典: https://blog.robozaps.com/b/figure-02-review )。NVIDIAのGR00T N1〜N2も同様に、VLMベースの推論モジュール(System 2)を使って長期的な計画を立てます(出典: https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-isaac-gr00t-n1-open-humanoid-robot-foundation-model-simulation-frameworks )。

Step 3 — 行動の生成(Action Decoder)

最後のステップが「動く」です。Vision Encoderが抽出した視覚特徴と、LLMが生成したサブタスク計画を統合し、Action Decoderがロボットの各関節に送る制御信号を出力します。

ここで出力されるのは「肩関節を5度回す、肘を10度曲げる、手首を3度傾ける…」といった低レベルのモーター指令です。ヒューマノイドロボットは全身20〜40自由度あるため、一度に数十次元のベクトルを、100〜200Hzのサイクルで連続的に生成する必要があります。

GR00T N1とFigure Helixはいずれも200Hzの高速動作生成(System 1)を実現しています。一方でSystem 2(計画)は7〜9Hz程度と遅いため、「遅いが賢い計画モジュール」と「速いが単純な実行モジュール」を階層的に組み合わせる二重システム構造が業界のデファクトになりつつあります。

VLAとVLMの違い — 「見る」で止まるか「動く」まで行くか

VLAモデルと混同されやすいのがVLM(Vision-Language Model)です。GPT-4VやClaude、Gemini、LLaVAなど、最近話題のマルチモーダルAIはほぼ全てVLMに分類されます。両者の違いは、「出力にAction(動作)が含まれるかどうか」です。

項目VLM(Vision-Language Model)VLA(Vision-Language-Action Model)
入力画像+テキスト画像+テキスト(+ロボット状態)
出力テキスト(説明・回答)ロボットの関節角度・速度・トルク等の制御信号
主な用途画像説明、視覚質問応答、OCR、文書理解ロボット制御、物体操作、ナビゲーション
代表例GPT-4V、Gemini、Claude、LLaVART-2、π0、OpenVLA、GR00T N1、Helix
動作周波数数秒に1回(推論ベース)100〜200Hz(リアルタイム制御)
物理世界との関係間接的(観察のみ)直接的(行動する)

簡単に言えば、VLMは「見て・理解する」までが守備範囲、VLAは「動く」までを含むのが決定的な違いです。実際のVLAモデルの多くはVLMを内部コンポーネントとして使っており、「VLMの上にAction Decoderを乗せたもの」と理解しても大きな間違いではありません。

Figure HelixやNVIDIA GR00T N1が採用する二重システム構造では、System 2(計画層)がVLMそのもので、System 1(実行層)がAction Decoderに相当します。つまり最新のVLAは「VLMを思考エンジンとして内蔵したロボット専用モデル」という位置付けです。

従来のロボット制御との違い

VLAモデルがなぜ革新的なのか、従来手法と比較するとよくわかります。

項目従来のロボット制御VLAモデル
制御方式ルールベース(if-then)、モデル予測制御学習ベース(エンドツーエンドNN)
プログラミングエンジニアが1つ1つ動作を記述データから動作を学習
未知のタスクへの対応新しくプログラムが必要ゼロショット/少数例で対応可能
言語指示原則として不可(事前定義コマンドのみ)自然言語で指示可能
環境変化への頑健性想定外の環境でエラー汎化性能で対応(得意な範囲内)
開発工数タスクごとに数ヶ月事前学習済みモデルを微調整(数日〜数週間)
透明性・デバッグ高い(ロジックが見える)低い(ブラックボックス化)

もちろんVLAがすべてにおいて優れているわけではありません。透明性とデバッグ容易性では従来手法に分があるため、安全性が特に重要な工程では両者を併用するハイブリッド方式も採用されています。たとえばFigure 03では、把持の最終段階は触覚センサーによる閉ループ制御(指先1本あたり3gの力を検知)で精密化しています(出典: https://www.figure.ai/news/introducing-figure-03 )。

代表的なVLAモデル5選

2023年以降に登場した主要なVLAモデルを、時系列順に紹介します。

モデル開発元発表年特徴オープンソース
RT-2Google DeepMind2023VLAの先駆者。Web規模の画像言語データを転用×
π0(パイゼロ)Physical Intelligence2024Flow Matchingで高精度・連続動作一部公開
OpenVLAStanford大学ほか20247B規模の完全オープンソースVLA○
GR00T N1NVIDIA2025業界標準の基盤モデル。二重システム構造○
HelixFigure AI2025ヒューマノイド特化。家庭内タスクで成果×

RT-2(Google DeepMind)— VLAの先駆者

RT-2(Robotics Transformer 2)は2023年7月にGoogle DeepMindが発表した、VLAという概念を世に広めた先駆モデルです。それまでのロボット学習は「ロボット用データ」だけで訓練するのが常識でしたが、RT-2はWeb上の画像・テキスト・ロボット動作を1つのTransformerで同時学習するという発想で、汎化性能を大幅に引き上げました。

たとえば「絶滅した動物を拾って」という指示に対して、RT-2はロボット学習データに「恐竜」が含まれていなくても、事前学習した言語知識から「プラスチック恐竜」を選び取ります。この「常識転移」の能力がVLAモデルの価値を一気に示し、以降のすべてのVLAモデルに影響を与えました。

π0(Physical Intelligence)— Flow Matchingで高精度

π0(パイゼロ)は、元Google DeepMind・Tesla出身者が2024年に設立したPhysical Intelligence社の汎用VLAモデルです。最大の特徴は、動作生成にLLMの標準技術ではなくFlow Matchingと呼ばれる連続生成手法を採用した点で、滑らかで精密な動作を得意とします。

同社は洗濯物を畳む・お皿を片付ける・箱を組み立てるなど、家庭内の複雑なタスクのデモ動画を多数公開しており、2024年のVLA研究で最も注目されたプレイヤーの1社となりました。

OpenVLA(Stanford大学ほか)— オープンソースVLA

OpenVLAは2024年にStanford大学・UC Berkeley・Google DeepMind・Toyota Research Instituteなどの共同研究で発表された、完全オープンソースのVLAモデルです。パラメータ数は7B規模(RT-2の1/7)ながら、多くのタスクでRT-2を上回る性能を示し、「閉じた大きなモデル」から「開かれた効率的なモデル」への流れを作りました。

OpenVLAの意義は、世界中の研究者・スタートアップがVLA研究を始められる基盤を提供したことです。これによりVLA研究が一気に民主化され、2025年以降のモデル乱立の土壌になりました。

GR00T N1(NVIDIA)— 業界標準の基盤モデル

NVIDIA GR00T(Generalist Robot 00 Technology)N1は、2025年3月に発表されたヒューマノイドロボット向けのオープンファウンデーションモデルです。System 1(200Hzの高速動作生成)とSystem 2(VLMベースの推論)を組み合わせた二重構造を採用しています(出典: https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-isaac-gr00t-n1-open-humanoid-robot-foundation-model-simulation-frameworks )。

GR00Tの強みは、NVIDIAエコシステム全体とのシームレスな統合です。シミュレータ(Isaac Sim)、合成データ生成(Cosmos)、オープンソース物理エンジン(Newton)、エッジ推論ハードウェア(Jetson Thor)までが1つのスタックで揃っており、「ロボット開発のAndroid」のポジションを狙っています。1X NEO、Boston Dynamics Atlas、Agility Digit、Apptronik Apolloなど、欧米主要ヒューマノイドのほぼすべてがGR00Tを採用または検証しています。

後継のGR00T N2も登場しており、System 2の推論能力・マルチロボット対応・少数例学習性能が強化されています。

Helix(Figure AI)— ヒューマノイド特化

Figure AIのHelixは、2025年に発表された同社専用のVLAモデルです。GR00T N1と似た二重システム構造(System 1: 200Hz、System 2: 7-9Hz)を採用していますが、Figureはこれを完全にクローズドで開発・運用している点が特徴です(出典: https://blog.robozaps.com/b/figure-02-review )。

Helixの強みは、ヒューマノイドロボットに特化した設計と、同一モデルで複数台のFigureロボットを協調動作させられる点です。Figure AIは2台のロボットが家庭でキッチンを片付けるデモを公開しており、「専用ハードウェア × 専用AI」の垂直統合戦略で差別化を図っています。

このほか、中国勢ではGalbot AstraBrain(数百億データセットで学習、出典: https://blog.robozaps.com/b/galbot-g1-review )、XPeng Turing AIチップ上のVLT/VLA/VLM統合(出典: https://botinfo.ai/articles/xpeng-iron-humanoid-robot )などもVLAモデルの主要プレイヤーとして急速に存在感を増しています。

VLAモデルの活用分野

VLAモデルは現在、研究段階から実用段階へ移行する過渡期にあります。特に注目されている3つの分野を見ていきましょう。

製造・物流

最も商用化が進んでいる領域です。Figure AIはBMWの工場に同社のロボットを導入済みで、部品の投入・組み立て補助といったタスクを担当しています。Agility RoboticsのDigitも、GXO LogisticsやAmazonの物流倉庫でコンテナ運搬・ピッキングに使われています。

VLAが製造・物流から普及している理由は明確で、(1) 環境が比較的制御されている、(2) 経済効果(人件費削減)が測定しやすい、(3) 安全柵で隔離しやすい、という3点です。2026年時点では1台あたり月額30〜50万円程度のRaaS(Robot as a Service)モデルが主流で、人件費との直接比較でROIを計算できます。

家庭用ロボット

2025年後半から一気に注目が高まっているのが家庭用です。1X Technologiesは2025年に家庭向けヒューマノイドNEOの予約販売を開始し、同社はテンドン駆動(バックドライバビリティ95%、静粛22dB)という家庭環境を意識した設計を採用しています(出典: https://www.1x.tech/androids/neo )。

家庭用の最大のハードルは「予測不可能な環境」です。工場と違い、家具の配置・子供やペットの動き・床に落ちたものなど、あらゆる変化にロボットが柔軟に対応しなくてはなりません。ここでVLAモデルの汎化性能が本質的に重要になります。ただし2026年時点では、完全自律での家事代行は技術的にまだ難しく、初期出荷台はテレオペレーション併用(操作者がリモートで見守り、難しい場面だけ介入)が現実解となっています。

医療・介護

最も未成熟だが、日本市場で最大のポテンシャルを持つ領域が医療・介護です。高齢者の見守り、移乗介助、リハビリ補助といったタスクが想定されています。

ただしこの分野は規制・安全性のハードルが極めて高く、VLAモデルの「ブラックボックス性」がネックになります。欧州ではAI Actにより、医療機器に該当するAIは厳しい検証が義務付けられており、VLA単独での医療応用は2026年時点ではまだ実証段階です。日本ではトヨタ・THKのSEEDプラットフォームが先行しており、介護施設での実証事例が積み上がりつつあります。

エッジコンピュータ — VLAを動かすハードウェア

VLAモデルは非常に重いAIモデル(数B〜数十Bパラメータ)であり、これをロボット本体で動かすには専用の高性能チップが必要です。クラウドに処理を任せる選択肢もありますが、「200Hzの制御ループ」をクラウドで実現するのは遅延的に不可能なため、業界はエッジ推論の道を選んでいます。

プラットフォーム性能消費電力価格主な採用
NVIDIA Jetson Thor (T5000)2,070 FP4 TFLOPS130W$2,999〜1X NEO、業界の事実上標準
NVIDIA Jetson T40001,200 FP4 TFLOPS70W$1,999小型ロボット向け
XPeng Turing AIチップ2,250〜3,000 TOPS非公開非公開XPeng IRON(自社開発)

出典: https://www.nvidia.com/en-us/autonomous-machines/embedded-systems/jetson-thor/ 、https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-releases-new-physical-ai-models-as-global-partners-unveil-next-generation-robots 、https://botinfo.ai/articles/xpeng-iron-humanoid-robot

NVIDIA Jetson Thor(2025年発売)は2,070 FP4 TFLOPSという、数年前のデータセンターGPUに匹敵する性能を130Wで実現し、VLAモデルをロボット本体で動かす「決定版」となっています。1X NEOがJetson Thorを標準搭載したことを皮切りに、欧米主要ヒューマノイドの採用が急速に広がっています。

中国勢ではXPengがTuring AIチップを自社開発し、2,250〜3,000 TOPSの性能を謳っています。これはNVIDIAへの依存を避ける戦略で、米中の技術分断が進むほどこの流れは加速しそうです。

VLAモデルの課題と今後の展望

VLAモデルは急速に進化していますが、実用化にはまだいくつかの壁があります。2026年時点で業界が直面している主要課題を整理しておきましょう。

データ収集コストと合成データの限界

VLAモデルの学習には膨大なロボット動作データが必要ですが、実世界でのデータ収集は極めて高コスト・低速です。ロボット1台・オペレータ1人で1時間に数十エピソードが限界で、1Mエピソードを集めるには数百人年が必要とされます。

この解決策として業界は合成データに賭けています。NVIDIA Isaac Simで物理シミュレーションを行い、GR00T N1は合成データ+実データの組み合わせで実データのみ比40%の性能向上を達成しました。ただし合成データだけで実世界の複雑さをすべて再現するのは難しく、「Sim-to-Real Gap(シミュレーションと現実のギャップ)」は依然として大きな研究テーマです。

安全性とブラックボックス性

VLAモデルはエンドツーエンドのニューラルネットワークであり、「なぜその動作を選んだのか」を人間が説明することが困難です。工業用ロボットのように決まった軌道を正確になぞるのではなく、学習した分布から確率的に動作を生成するため、想定外の状況で予測不可能な挙動を示すリスクがあります。

この課題に対し、業界は (1) 触覚センサーによる閉ループ制御、(2) 安全境界を定義する古典制御との併用、(3) テスト時の異常検知モデル、といったアプローチで多層防御を構築しています。

汎化性能の壁

現状のVLAモデルは、「訓練で見たタスクに似たもの」には強いですが、「まったく新しいタスク」への汎化はまだ限定的です。たとえばGR00T N1は「箱を積む」ことは学習済みでも、「積んだ箱を崩してから再構成する」といった応用は苦手、というケースがあります。

2025〜2026年のVLA研究の主戦場はまさに「汎化性能」で、より大規模なデータ・より大きなモデル・より良い学習アルゴリズムの組み合わせで段階的な改善が進んでいます。真の汎用性が実現する時期について、業界では「家庭内の一般的なタスクに対応できるレベルは2028〜2030年」という見方が有力です。

標準化とオープン化の綱引き

最後が戦略的な論点です。NVIDIA GR00TがAndroid的なオープン基盤を目指す一方、Figure HelixやTesla FSDベースのOptimus AIは垂直統合クローズド戦略を取っています。中国勢はXPeng Turing、Galbot AstraBrainなど自社開発路線を選んでいます。

この構図はスマートフォン業界(iOS vs Android)と似ており、2030年頃にどの陣営が主導権を握るかが、そのままヒューマノイド業界の勢力図を決めることになりそうです。

よくある質問(FAQ)

VLAモデルとVLMモデルは何が違うのですか?

VLM(Vision-Language Model)は画像とテキストを入力としてテキストを出力するAIで、GPT-4VやClaude、Geminiなどが代表例です。これに対しVLA(Vision-Language-Action)は出力にロボットの動作(関節角度・速度・トルクなど)が含まれる点が決定的な違いです。簡単に言えば、VLMは「見て理解する」まで、VLAは「動く」までを1つのモデルで行います。最近のVLAは内部にVLMを計画層として持つ二重システム構造が主流です。

VLAモデルはどんなデータで学習していますか?

主に3種類のデータを組み合わせます。(1) Web上の大規模な画像・テキストデータ(VLM部分の事前学習用)、(2) 実ロボットで収集した動作データ(人間がテレオペレーションで集めるのが一般的)、(3) シミュレータで生成した合成データです。NVIDIA GR00T N1は合成データと実データを組み合わせることで、実データのみ比40%の性能向上を達成しました。大規模言語モデルがWebデータで事前学習するのと同じように、ロボットも複数ソースの大規模データで学習する時代になっています。

代表的なVLAモデルのうち、どれが一番優秀ですか?

2026年時点で「総合No.1」を決めるのは難しく、目的別に使い分けるのが現実的です。業界標準のオープンモデルが欲しければNVIDIA GR00T N1、研究用の完全オープンソースならOpenVLA、精密な連続動作ならPhysical Intelligenceのπ0、ヒューマノイド特化ならFigure Helixが選ばれます。企業が自社ロボットを開発する場合は「GR00Tで立ち上げて自社データで微調整する」パターンが多く、事実上GR00Tが最も広く使われています。

VLAモデルを動かすにはどんなハードウェアが必要ですか?

VLAモデルは数B〜数十Bパラメータの大規模モデルで、これを200Hzの制御ループで動かすには高性能なエッジ推論チップが必要です。業界標準はNVIDIA Jetson Thor(2,070 FP4 TFLOPS・130W・2,999ドル〜)で、1X NEOをはじめ多くのヒューマノイドが採用しています。小型モデルならJetson T4000(1,200 TFLOPS・70W・1,999ドル)も選択肢です。中国のXPengは自社開発のTuring AIチップ(2,250〜3,000 TOPS)で対応しています。クラウド処理は遅延の関係で不向きで、エッジ推論が業界の主流です。

VLAモデルがあれば、家庭用ロボットはすぐ実用化されますか?

技術的には2025〜2026年が初期実用化フェーズで、1X NEOなどが予約販売を始めています。ただし「完全自律での家事代行」はまだ難しく、当面はテレオペレーション併用(難しい場面はオペレータがリモート介入)が現実解です。家庭環境は工場と違って予測不可能な変化が多く、VLAの汎化性能がまだ追いつかない場面があります。業界では「本格的な家庭内汎用タスクの実用化は2028〜2030年」という見方が有力で、2026年はまだアーリーアダプター向けの段階です。

まとめ

VLAモデルは2023年のRT-2登場からわずか2〜3年で、ヒューマノイドロボットの「頭脳」として業界標準の地位を獲得しました。2026年時点の要点をおさらいします。

  • 仕組みは3ステップ: Vision Encoder(見る)→ Language Model(理解する)→ Action Decoder(動く)の3層構造。最新モデルは「計画層(低速・賢い)+ 実行層(高速・単純)」の二重システムが主流
  • VLMとの違いは、出力に「動作」が含まれるかどうか。VLMは思考までで止まるが、VLAは物理世界で行動する
  • 代表モデル5選: RT-2(先駆者)、π0(高精度連続動作)、OpenVLA(オープンソース)、GR00T N1(業界標準)、Helix(ヒューマノイド特化)
  • ハードウェア: NVIDIA Jetson Thor(2,070 TFLOPS)がデファクト。中国はXPeng Turingで独自路線
  • 課題: データ収集コスト、ブラックボックス性、汎化性能、安全性。本格的な汎用化は2028〜2030年と予想されている

VLAモデルは単なる技術バズワードではなく、フィジカルAI時代のヒューマノイドロボット全体を支える基盤技術です。今後数年でどのモデル・どの陣営が主導権を握るかが、業界の勢力図そのものを決めることになります。業界標準となりつつあるNVIDIAの基盤モデルについてはNVIDIA GR00T完全ガイド、AIに物理常識を持たせる技術についてはワールドモデルとは?NVIDIA Cosmos解説もあわせてご覧ください。ヒューマノイドロボット全般はヒューマノイドロボット完全ガイドからどうぞ。

参考文献

  • NVIDIA「Isaac GR00T N1: Open Humanoid Robot Foundation Model」 https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-isaac-gr00t-n1-open-humanoid-robot-foundation-model-simulation-frameworks
  • NVIDIA「NVIDIA Isaac GR00T N1論文(arXiv)」 https://arxiv.org/abs/2503.14734
  • NVIDIA「Jetson Thor 製品ページ」 https://www.nvidia.com/en-us/autonomous-machines/embedded-systems/jetson-thor/
  • NVIDIA「Physical AI Models and Next-Generation Robots」 https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-releases-new-physical-ai-models-as-global-partners-unveil-next-generation-robots
  • NVIDIA「Physical AI Real World」 https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-and-global-robotics-leaders-take-physical-ai-to-the-real-world
  • NVIDIA Isaac 開発者ポータル https://developer.nvidia.com/isaac
  • Figure AI「Introducing Figure 03」 https://www.figure.ai/news/introducing-figure-03
  • 1X Technologies「NEO 製品ページ」 https://www.1x.tech/androids/neo
  • Boston Dynamics「New Atlas Robot」 https://bostondynamics.com/blog/boston-dynamics-unveils-new-atlas-robot-to-revolutionize-industry/
  • Unitree「G1 製品ページ」 https://www.unitree.com/g1/